NECO series　Anco 2024

秋がゆっくりと色づく頃、
このアンコというワインもまた
長い時間をかけて自らの色を育てていきます。

山形の陽を浴びた完熟デラウェア。
生食用として知られるこのぶどうを、あえて醸し発酵させることで、
果実が本来持つ静かな情熱を、ゆっくりと引き出しました。

およそ4ヶ月という長い醸しの時間は、
まるで人が少しずつ自分の声を見つけていく過程のよう。
そのあいだにラブルスカ特有の香りはやわらぎ、
代わりに蜜を含んだ杏子のような甘やかさ、
ハチミツレモンの優しい酸、
そして生姜やアニスがほんのりと香る、
奥行きのある表情が生まれました。

樽とアンフォラ、それぞれでゆっくり呼吸を重ね、
日本の風土に根ざした酸化熟成が、
どこか懐かしくも洗練されたテクスチャーをつくりあげています。
その味わいは、包み込むようにまろやかで、
グラスの中で少しずつ声色を変えていく
まるで時間そのものを味わうような一本です。

ペアリングは、少し特別な食卓に。
揚げたてのトンカツやカキフライの香ばしさ、
鯖の煮付けや大学芋の深い甘辛さ、
そんな日常のごちそうに寄り添いながら、
食卓全体をやわらかく照らしてくれます。
ワインと料理が対話するように、一口ごとに世界がひらいていく。

抜栓からゆっくり時間をかけて
日をまたぎながら変化を楽しむのもこの子の魅力。
その姿はまるで熟した果実が秋風にほどけていくようです。

Anco 2024は、日本の葡萄が語るやさしさのひとつの答え。
どんな瞬間も自然からの贈りものとして、
人と土地と時間をそっと結んでくれる一本です。