御前酒 1859 辛口 720ml

今年の「御前酒 1859 辛口」は、ひときわ特別な装いで登場します。
定番の「1859」が持つ骨格はそのままに、
岡山県倉敷市生坂地区で育まれた雄町を用いた一本。

手がけるのは、430年の歴史を受け継ぐ田を守り
自然に寄り添う栽培を続ける「まめ農園」目黒貴之さん。
川底由来の土壌は豊かな鉱物を含み
風が抜ける広い株間の稲はのびやかに葉を広げます。
その光景は長い時間をかけて描かれる風景画のように
落ち着きと力強さをあわせ持っています。

昨年の猛暑で米は硬く溶けにくい質となりましたが
無理に解かすことはせず米の呼吸に身を任せた醸しを選びました。
結果として生まれたのは、数値だけでは語りきれない芯のある辛口。
静かな水面に石を投げたとき、波紋が幾重にも広がるように
口に含むほどに奥行きが現れてきます。

味わいは、初めはやさしく、のちにじんわりと膨らみ
最後にはきりりとした余韻を残す。
その流れは、夕暮れの空が群青に溶け込んでいく時間を思わせます。
辛口でありながら、熟れた果実の影をほんのりと残す
奥行きのある表情を見せてくれるのです。

香ばしく炙った椎茸や舞茸、バターを落としたとうもろこしのソテー
塩を利かせた豚肉のグリルなど。
秋の台所に立ちのぼる香りと
お酒の押し味とが重なり合う瞬間は、心を豊かにしてくれます。

稲穂を揺らす風の音を背に飲む一杯。
湯気に包まれる食卓で笑顔が並ぶひととき。
映画を見終えた夜に、静けさと余韻をともにする一杯。

「御前酒1859辛口」は、雄町の個性を見つめ続ける生産者と
酒造りに誠実に向き合う蔵元の手によって生まれた一本です。
どうぞ心を込めて味わっていただければ幸いです。