初代藤市 鹿 25度

霧島山麓のやわらかな風が吹き抜ける宮崎県都城。
この土地に根づく芋焼酎の文化を守り
今も新しい一滴を重ねているのが大浦酒造です。
明治四十二年の創業から百余年。
かつて十を超えた蔵が並んだ町で
いま最も小さな蔵として
手しごとの時間を大切に受け継いできました。

大浦酒造が大切にしているのは「見守りながら育てる」こと。
時代が移っても、素材と向き合い、技を磨き
心を注いで一本を仕上げる姿勢は変わりません。

その象徴が縁起のよい銘柄【猪鹿蝶】
「萩に猪」は子孫繁栄
「紅葉に鹿」は開運
「牡丹に蝶」は夫婦円満
まるで四季を描いた屏風をひらくように
願いと喜びを託した名前です。

【鹿】は紅はるかを黒麹で仕込んだ一本。
赤芋ならではの華やかな香りが
秋の果実のようにゆるやかに広がり
口に含むと焚き火の残り香を思わせる奥深さと
朝露のようなみずみずしさが同居します。
時間をかけて立ち上る甘やかな余韻は
季節の食卓にしっとりと寄り添います。

合わせるお料理は、秋の家庭の温もりを映したものがおすすめ。
きのこと栗を炊き込んだご飯や、かぶと豚肉のミルク煮。
オーブンで焼いた秋鮭とポテトのグラタンや
甘塩の鮭とほうれん草のキッシュなど、
洋の味わいとも自然に溶け合います。

大浦酒造が守り続ける静かな情熱と、季節の恵みが重なる一杯。
グラスを口に運ぶそのたびに、日々の時間がゆっくりとほどけ、
心の奥にあたたかな灯をともしてくれます。