野田 720ml

阿部酒造が取り組む圃場別シリーズ
その第三弾は「野田（のた）」。
千葉県の野田市と同じ字を持ちながら
読みは濁点のない「のた」。
その土地の響きが示すように
静けさと力強さをあわせ持つ一本です。

野田は米づくりにおいて理想的な条件を備えた土地。
雪深く、豊かな雪解け水に恵まれ
周囲を山々に囲まれた盆地は風通しがよく
昼夜の寒暖差も大きい、まさに優等生のような環境です。
しかし現実には、そこは「限界集落」と呼ばれるほどに
人の営みが遠のきつつある場所。
冬には二メートル近い積雪、最寄り駅まで十キロ
小中学校も遠く、生活の不便さが人々を離れさせ、
代わって野生の動物たちが田畑に入り込みます。
理想と困難、その二つの相反する顔を持つ
土地で生まれるお米を、阿部酒造はお酒に託しました。

マスカットなどを思わせる瑞々しい果実感で幕を開け、
しっとりとした旨みがやわらかに広がります。
温度が下がるにつれて甘みはしなやかに姿を変え
透明な流れのように口の中を駆け抜け
余韻は清流のように静かに続きます。
力強さよりも繊細さが際立ち
飲むほどに土地の風景が胸に立ち上がってくるようです。

一杯の中に宿るのは、自然と人の営みの記憶であり
これからも続いていく物語。
その物語を口に含みながら、いつもの食卓が
ほんの少しだけ深みを増す時間を楽しんでいただければと思います。


720ml...1980円(税込)
https://mimasu-sake.jp/products/detail/825