Vermouth 250ml / non alcohol

はじまりは昨年のこと。
偶然が重なり、ひとつのレシピが生まれました。
それは意図せずとも、思いのほか澄んだ調べのように美しく
飲む人の記憶に深く刻まれる味わいとなりました。

その記憶をたどるように、今年もまた仕込みは始まります。
自社の畑で陽をたっぷり浴びたマルヴァジアのぶどう
愛媛の農家さんから届いた黄金色の「ひめこはる」
アルフィオーレの畑に自生するニガヨモギ
川崎町の畑で風に揺れるカモミール。
ひとつひとつの素材がまるで登場人物のように物語へと姿をあらわし
互いに語らいながらひとつの調和をつくりあげていく。

しかし物語には必ず“鍵”があるもの。
今年、その鍵となったのは焦がしキャラメルと柑橘の皮でした。
甘やかな陰影とほろ苦さが最後の旋律を奏で
ようやくレシピは完成へと辿りつきました。

口に含めば、ぶどうと柑橘のやわらかな光がひろがり
その奥に薬草の香りがふっと影を落とします。
ただ爽やかなだけではない、奥行きと陰影をたたえた一杯。
ノンアルコールでありながら、
まるでヴェルモットを想わせる複雑さが
テーブルに静かな彩りを添えてくれます。

楽しみ方は自由です。
水と氷だけで、透きとおるような柑橘の表情を。
ほうじ茶や紅茶と合わせれば、落ち着いた大人の余韻に。
ミルクで割れば、不思議とやさしく包み込まれる
新しい一面に出会えるでしょう。

合わせる料理もまた、物語を広げてくれます。
マリネやアボカドを使ったサラダには清々しい風を、
スパイスのきいた炒めものには軽やかな抜け感を。
蒸した野菜や魚料理には、素朴さの中に小さな驚きを。
ブランチにも夕餉にも、この一杯はさりげなく寄り添い、
日常の景色を少しだけ違う角度から見せてくれます。

Vermouth、それは季節と人と畑が織りなす、ささやかな物語。
飲み終えたあとに残る余韻は、季節の光のように穏やかです。
あなたの毎日にやわらかな彩りを添える一杯となりますように。