酒屋八兵衛 備前雄町　山廃純米 1800ml

火入れを済ませ、ひと呼吸おいてから瓶に詰められた一本です。
盃に寄ると、備前雄町らしいやわらかな旨みがふくらみ
乳酸を思わせるミルキーな香りがすっと後ろから支える。

口あたりは丸く、山廃の酸は前に出過ぎず
全体の骨格だけをきれいに通してくれます。

常温では米の甘みが素直に、ぬる燗にするととろみがほどけて角が消え
上燗では芯だけを残してするすると進む。
骨太といっても重たいわけではなく
安心して寄りかかれる柱が一本、静かに立っている感じです。

合わせる食事は、少し味の濃いお皿がよく似合います。
味噌だれの鶏もも照り焼きや牛すじの味噌煮
脂ののった鯖の味噌煮には、ぬる燗で旨みを重ねて。

カキフライや豚の生姜焼き、ラザニアのようなコクのある洋皿には
常温〜上燗でミルキーな香りを響かせると余韻がきれいに整います。

中華なら麻婆豆腐（花椒は控えめ）や回鍋肉、
台湾風の魯肉飯も好相性。
油と甘辛の厚みを、穏やかな酸がすっと束ね
飲み疲れさせないまま盃を次へと誘います。

寒い夜、鍋の火を弱めてからお銚子を湯にあてると、
立ちのぼる湯気の向こうで旨みがゆっくり開いていく。
柔らかさの奥にある静かな強さを、今夜はお燗でお楽しみください。